<<これから楽器を購入される大人の生徒さんへ>>


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これからバイオリンを始める方で、過去にバイオリンを購入した経験が豊富な人は少ないでしょう。
楽器の特殊性から、どんなものを、どこで購入したら良いのか?と、迷われる方も多いと思われます。
実際に生徒さんから質問される事も多く、また、現在お持ちの楽器の選び方を誤ったのでは?と悩んでおられる方も時々見かけます。
そんな迷いの多い楽器選びに関して、楽器の購入を考えていらっしゃる方へ、 バイオリンという「物」について少しお伝えします。

■レッスンに必要なバイオリンは?
バイオリンを弾きたいと思った時、「バイオリン」として販売されているものならどれでも使える、と
考える方が多いと思います。しかし残念ながら、中には使えない物もあります。
ですから、バイオリンに関しては「あまり安いから、つい買っちゃった」は禁物!です。
飾っておくのが目的であれば、どの楽器でも問題は無いでしょうが、
ここでは、あくまで「
レッスンで使用できるバイオリン」、という事を前提にお話しします。

「レッスンで使用できる」という事の最低条件は、1)「
楽器として演奏可能」なもの、
2)「レッスンを受けて、習った分だけ
上達できる」もの、という事だと考えています。

■では、はじめに購入するのはどんなバイオリンが良いのでしょうか?

選ぶポイントは、「今すぐ
良い状態で使える楽器。そして、少しでも長い期間満足して使える楽器」
だと思います。
レッスンに「
良い状態で、長く使える」楽器とは、生徒さんがレッスンして上達して行くのに
必要な機能を最低限備えている楽器(正しく弾けばちゃんと正しい音が出るということ)、そして、
一通りのバイオリンの奏法を身につけて頂くまでの間に、楽器の不備や性能不足の問題での買い替えの必要の
出てこない楽器、ということです。

バイオリンというと非常に高価な楽器というイメージがあり、実際、上を見たらきりがないほど
高価なバイオリンが存在します。
しかし、初心者の方がレッスンを始めるにあたっては、前述のように、楽器としての機能をきちんと備えて
いるものなら、それ以上に高価な楽器である必要はありません。
後はご予算とも相談して、納得のいく物を選んで頂けば良いのです。

■「バイオリン」には、どんなものがあるのか?
バイオリンという名前で販売されている物の中にも、いろいろな物があります。
一見同じように見えますが、何を目的として作っているかによって、作りや、価格が違っています。
では、どんな物があるか?、ということについて簡単にご説明します。

1)ハンドメイドの本物のバイオリン
バイオリンは元来は職人さんがひとつずつ手づくりする、ハンドメイドの工芸品のような楽器なのです。
そのような昔ながらの方法で作られた楽器を購入するには、楽器本体だけでも100万円近い価格から
になると思われます。
名人の作った楽器が高価であったり、いわゆる「オールド」と呼ばれるような、年数が経つほど楽器が高価になる、
というようなバイオリンの世界は、このカテゴリーの中の事です。
これが、本格的な「バイオリン」であることは、今も昔もかわりません。

音、価格、その他の条件での選択肢の幅が広く(楽器ひとつひとつで違います)、
自分で充分に弾き比べてみたり、楽器や音楽に関する知識を持ってからでないと、選ぶことが困難だと思われます。
また、性能が良いという事は、弾き方のちょっとした悪い点も敏感に拾って音にして、雑音が出てしまうため、
初心者の方にはかえって良い音が出しにくい、ということもあります。
高価な楽器の取り扱いという面からも、慣れない初心者の方が持たれるには心配な事も多く、
初心者の1つ目の楽器としてお勧めするのは現実的ではないと思います。

しかし、もし、一生の間にこういう本物の楽器が必要になって、手にして頂ける時が来れば、幸せな事です。
バイオリンという楽器の、真の価値を味わうことができるでしょう。
音の良さ、性能はもとより、見た目の美しさもこのカテゴリーのものは格段に違うため、
気に入った一つの楽器に出会う事ができれば、深い愛着が持てるものです。
「楽器」自体に、このように魅力があり、多くの方が楽器そのものに憧れの気持ちをもたれるのも、
他の楽器に無いバイオリンならではの特色のようです。
目標として、そういう楽器を手にする日を夢見て練習されたり、楽器についての知識を深めて行くのは、
良い事だと思います 。


2)良質な量産品
最近は工場で量産される楽器の中にも、ちゃんとした材料で作られ、良く管理されて制作、販売
されているものがでてきています。それらは、バイオリンとしての構造、材質は本物と同じに作られていますが、
すべて一人の職人さんにより手づくりされた楽器に比べれば、安価に入手できるようになっています。
その中で、 長期の使用(使おうと思えば、おそらく一生)に耐えられると思われるものは、
大人の楽器で一式20万くらいからです。
(作られている国、仕上げにどのくらい職人さんの手が入っているか、というような違いで、
上は50万以上までのものがあります。)

一つのメーカーから同じ商品として販売されているものには、基本的に(1)の楽器のような個体差は無い、
とされているのがこの(2)の楽器です。
しかし、「個体差は無い」という建前ながら、同じ物は二つと無い「木」でできた製品なので、
比べてみれば、感じられる音の違いや、色合いの違いは、やはりあります。

また、かなり多くのメーカーがあり、同じくらいの価格の物、似たように見えるものでも、
実はずいぶん差がある物が混在しているのがこのカテゴリーの楽器です。
販売までの過程で良く品質がチェックされ、使える状態に整えられているかどうかでも違ってきます。

ですから、信頼できるバイオリン専門店で、しっかり物を見せてもらって(出来る事なら、同じ製品でも
いくつか実際に見比べた上で)購入することをおすすめします。

材料や製法も手づくりの楽器に準ずるように作られているため、良い物を選べば、丈夫さはもとより、
初心者の方がレッスンして行くにあたって(上達するまで)、楽器として不充分な点はほとんど出て来ません。

近年、このカテゴリーの良い楽器が多く流通するようになった事により、初心者の方には楽器の選択肢が広がったと思います。
これから始められる大人の方に、安心してお勧めできるのは、このカテゴリーの物です。
新品の状態が最良で、古くなった物はオールドというより中古、何年か使用した物を譲って頂くような場合には
メンテナンスに意外に費用がかかることもありますので注意が必要です。


3)国内メーカーの初心者用楽器
国内の専門メーカーの量産品の初心者用楽器で1セット6万円くらいのもの。これは「初心者専用」のものの中では非常に良質で丈夫、
なかなか壊れませんし、最初心者の期間(1年くらい)に限って言えば、特に上達の妨げになるような不備な部分はありません。
しかし、 コストを落とす必要で材料、製法から、本来のバイオリンと変えてある部分があるために、
表現できることの幅が狭く、上達とともに数年で不足な点が顕著になって来ます。
(この楽器は、身体の成長に合わせて2、3年で買い替えが確実な、子供さん用の始めの楽器には充分なものです。
子供さんは、こういう楽器で当初練習しても、上達して大人の楽器になる時には性能の高いものに買い替え
る機会があるからです )
す)。

大人の生徒さんは、子供さんと違って、今後、身体の成長に合わせて楽器を買い替えていく、
というチャンスはありませんので、はじめに、あまりにも「初心者専用」のものを買ってしまわれると、
ご本人の意思で買い替えを決意されないかぎり、ずっと、その、機能的に不充分な楽器で続けていってしまう
=上達しにくい、という心配があります 。
ちなみに、この楽器も、バイオリンの専門店では弾き易いように調整をした上で販売してくれますので、
もし購入される場合は、バイオリンの専門店で購入されるのがおすすめです。

この(3)クラスの楽器でしたら、はじめからもっと性能のいい楽器を使われた方が、速く上達できると思います。
私の教室でも、この楽器を持って教室に入って来られた大人の生徒さんは、続けている限り必ず買い替えの必要が
出て来ていますが、後に買い替えを決意するのは、なかなか難しいことのようです。
お教えしていて「楽器による不足」を感じ始めてから、生徒さんご自身が不足を自覚され、買い替えを決意
されるまで数年かかる事がほとんどで、その間が「もったいなかった」ということは、換えてみてからでないと
ご本人にわからない所に問題があります。
そのような理由で、この楽器は大人の初心者の方にはあまりお勧めしませんが、はじめのうちは使えます 。
修理して長く使う事を想定して作られていない楽器なので、購入は新品が望ましいです。


***↑ここまでがレッスンに使用可能な楽器です。


4)驚くほど安価なバイオリン
特にお気をつけ頂きたい物としては、最近出回っている、初心者用の非常に安価なバイオリンがあります。
さまざまな物があるので、物によっても程度にばらつきはありますが、こういう物の中には、
バイオリンという「楽器」として、最低限必要な機能が備わっていないようなものも多く見受けられます。
せっかく購入されて持ってこられたバイオリンが、残念ながら、レッスンでどうにも使用できなくて、
早々に買い替えをお願いしなくてはならなくなる、というような悲しいケースも出て来ました。
安いものとはいえ、バイオリンの形をしたものを「これは使えませんので捨ててください」と
申し上げるのは心苦しく、何故、どのように使えないのか、ということを、始めたばかりで何もわからない
初心者の方に納得頂けるようにご説明するのも難しいため、とても困惑することがあります。

はじめは適当な安物で良い、という考えは、バイオリンでは無駄な事になってしまうばかりか、
上達の妨げになることがあります。上達できるためには、始めから「最高」ではなくても「適切」な道具を
持つ事が必要だと言う事は、バイオリンも他の習い事とまったく同じです。
(おもちゃのラケットでテニス教室に行くような感じ、と思ってください。)

私は、生徒さんの持ってこられた楽器は、どのような楽器でも使える物は出来るかぎり使ってレッスン
する方針なのですが、この(4)の種類の楽器は、残念ながら使用できない事の方が多いです。
せっかく持っていらしても、早々に買い替えをお願いしなくてはならなくなる場合があります。
購入される前に、是非ご相談下さい。

5)サイレント等の電子バイオリン
楽器としての価値を否定するつもりはありませんが、木で出来た普通のバイオリンとは「別物の楽器」と
お考え下さい。楽器としての性質が違うので、弾くために必要なこと(音の出し方)も違っていると思われます。
普通のバイオリンは、木でできた本体の「箱」部分をいかに振動させるのか、ということが「音」作りの
根幹ですが、
電子楽器はそれを機械で代換している仕組みです。
電子バイオリンをうまく弾けるようになっても、それで、普通のバイオリンに持ち替えて直ぐ同じように
弾けるか(楽器本体を響かせられるか?)と言えば、
難しい可能性もある、ということを知っておいて下さい。
ちなみに、普通のバイオリンを弾ける方は、とくに問題無く電子バイオリンを弾ける場合が多いので、
夜間の練習等に用いている人もいらっしゃいます。

もちろん、違いを知った上で電子バイオリンを選ばれるのであれば、それもまたひとつの楽しみ方だろうと思います。
当教室では、電子楽器でのレッスンは行っておりません。


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最近ではいろいろな方法で、簡単にバイオリンを購入する 事が出来るようになって来ましたが、
バイオリンという楽器の事を知らずに、バイオリンを購入するというのは、とても難しい事だと思います。
以前のように、バイオリンはバイオリンの専門店でしか購入できなかった時と比べて、
ますます難しく、問題が多くなった、とも言えます。

現物を見ないで購入するような買い方は、バイオリンにおいては、今の時代でもお勧めできません。
それは、実際にいくつかのバイオリンを並べて、その中から「選ぶ」ことをしてみればすぐに実感できます。
どなたにとっても、「どれでもいい」「どれでも同じ」ということは無いのです。
一生のおつきあいになるかもしれない自分の楽器を選ぶのであれば、ますますです。

当教室では、楽器に関しては、当初は、無料でお貸しできる教室の楽器、または、楽器屋さんからのレンタル等の方法で、
試してみられる事をお勧めしています。半年くらいレッスンを続けられると、だいたいの方が
バイオリンを弾く事にも慣れ、先の見通しもある程度立ってくるようですので、
その時点で選んで頂くのが、一番無駄が無いと思われます。
もちろん、高価な物を買う必要はありません、どのような選択をされるにしろ、ご自分がちゃんと理解して
納得されてお決めになる事が大切です。
すぐにご自分の楽器がほしいという方もご相談下さい、詳しくご説明いたします。

大人の楽器は、どんな楽器でも、一度買うと一生ものになってしまう事がほとんどです。
大切なご自分の楽器は、しっかり時間をかけて選択して頂きたいと思っています。